『王様のお願い』というタイトルを聞いただけで、あれこれワクワクと想像が膨らんでしまう細見博子さんの展覧会です。

金属とガラスの組み合わせで構成された摩訶不思議な生き物たちは、それぞれの意志を持って互いの関係が成立しています。そこにはいつも、「明るく、楽しく、平和に」という細見さんのメッセージが込められています。

その作品は、まず「ソリットワーク」というガラスの塊を溶かして成形する技法で、ガラスのパーツを作ることから始まります。それを、錫と鉛の合金で作られた金属のパーツの間に計画的に噛ませ、ハンダゴテを使って立体に組んで完成させます。素材は常に溶けて熱いのですが、金属部分はまるで粘土細工のように自由自在に扱われ、ガラスを金属に噛ませる難しい技術も、細見さんならではの特技です。

「ここ最近外国の方に作品を見ていただく機会が多く、カエルを手に取りキスをする人をよく見かけます。『カエルの王様』の童話にちなんで冠を付け、ラッキーアイテムにしようかと考えています。今回は王様が“小鳥たちに願いを叶えてあげるよ！”と言う明るい話です」

『絵本の立体バージョン』を創りたいという細見さん。「ただ単に具象を表現するのではなく、自分だけの世界感の生命の系譜を表現していこうと思っています」も。この自然界に存在するあらゆるものを、彼女の想像力を持って、果てしなく明るく、楽しく、平和に、関連づけたいと願って制作を続けているアーティストです。