なおる
立花英久
ストーブの前に
ひざをかかえてしゃがんでいるひとが
かわいていく。
ほんとうなら日かげで時間をかけて
かわいていくが
あるいは日のひかりを浴びたりも
しているけれど
ストーブでかわいていくと
ひびが入り
割れて
思いもよらないところが傷ついている。
ある散文家が
「書きはじめるというのは言葉に傷を
つけて、なおっていくまでの時間をずっと
見ていくことだ。そのなおるまでの時間
が人それぞれちがうだけで、
なおりかけのものもあっていい」
と云った。
なおるのを
ただながめるように。
ひざをかかえていた手が動いている。