2018.12.15 sat. - 12.24 mon.
立花英久の塑像
ジョヴァニーニのアリア、クレー、オズ
立花英久
『東京物語』をたまに見ると、やっぱり最初のほうに出てくる煙突の絵が気にかかる。映画のなかで初めて「東京」を映す画が煙突なのである。六本の煙突がただすっと立っているだけ。ある人はその当時の成長する東京の映し絵だというし、その眼下には市井の人々がそれでも生きている隠喩だという人もいる。だけどそんなふうに僕には見えない。あまりにか弱く、ただ立ち尽くしている、人そのものである。同じ方向を向いて、でも何を見ているのかわからない。
僕は今も土くれとか木とか、棒きれのようなものを、ヒトガタにこしらえ直している。彼女たちがどこを見ているのかわからないし、何を見ていいかわからない。このように、それは、秘かにはじまる。